上顎前方牽引装置とは？効果や治療の全体像を解説

1. 上顎前方牽引装置の概要

上顎前方牽引装置（フェイスマスク・プロトラクター）は、受け口（反対咬合）や骨格性下顎前突を治療する矯正装置。特に成長期の子どもに適用され、上顎の成長を促して噛み合わせを整える。外科手術なしで骨格矯正が可能で、見た目や機能面の改善が期待される。

 

 

2. 治療の仕組みと原理

装置は、以下の3つの主要な部品で構成される。

1. フェイスマスク：外部装置で上顎を前方に牽引する。
2. ゴム（エラスティック）：フェイスマスクと口腔内装置を連結し、力を加える。
3. 口腔内装置：上顎の歯や骨に固定し、牽引力を受け止める。

この装置を用いることで、上顎骨を前方に成長させ、下顎とのバランスを整える。特に7〜13歳の成長期に使用され、日本人に多い受け口の原因である「上顎の成長不足」を補う役割を果たす。

3. 治療対象と適応年齢

3.1 反対咬合（受け口）とは？

受け口は、上顎の発育不全や下顎の過剰成長が原因となる。成長期に矯正を行うことで、骨格的なバランスを調整し、手術を回避できる可能性がある。

3.2 小児と成人の治療の違い

• 小児（7〜12歳）：骨の成長を活かして非外科的に矯正可能。
• 思春期（13〜18歳）：成長が落ち着くため、効果が小児期より限定的。
• 成人（19歳以上）：骨格矯正の効果が低く、外科手術が必要な場合も。

4. 治療の流れと期間

4.1 診断と装置の装着

1. 診察・診断：レントゲンや口腔内診断で骨格を分析。
2. 型取りと装置の製作：患者に合わせたカスタム装置を作成。
3. 装着と指導：使用方法を説明し、定期調整を実施。

4.2 治療期間と経過観察

• 小児：6か月〜2年
• 成人：1年〜3年

月1回程度の通院で装置の調整を行い、経過を確認。装着時間（通常12〜14時間）を守ることで治療効果が向上する。

5. 上顎前方牽引装置のメリットと課題

5.1 メリット

• 上顎の成長を促し、手術不要で噛み合わせを改善。
• 成長期に使用することで、将来の外科手術を回避できる可能性が高まる。

5.2 課題

• 装着感：顔に装置を付けるため、慣れるまで違和感がある。
• 協力が必要：装着時間を守らないと効果が出にくい。
• 治療失敗のリスク：装置の破損や装着時間の不足で効果が低減。

6. 装置使用中の注意点

6.1 清掃とケア

• 毎日清掃し、装置の汚れを防ぐ。
• 硬い食べ物を避け、歯磨きを徹底する。

6.2 破損・不具合への対応

• 破損時はすぐに歯科医院へ相談。
• 定期通院で調整し、装置の状態を確認。

7. 費用と保険適用

7.1 費用の目安

• 自費診療：30万〜50万円
• 保険診療：適用条件を満たせば数万円〜10万円程度

7.2 費用軽減の方法

• 医療費控除：確定申告で税金の負担を軽減。
• 自治体の補助：子ども向けの補助金がある場合も。
• 分割払い：歯科医院の分割プランを活用。

8. まとめ

上顎前方牽引装置は、成長期の受け口治療に効果的な矯正装置。特に7〜12歳での治療が効果的で、外科手術なしで噛み合わせの改善が可能。医師と相談し、最適な治療方法を選ぶことが重要。

 

詳細は小児矯正の新常識：上顎前方牽引装置で受け口を改善する方法