『企業は人なり』をモットーに、熱意や誠意、想いを社長自ら伝える営業スタイルを昔から貫いている。前職は銀行員で、社長に就任した今も当時学んできた考えを大切にしている。
「普段は徳島にて業務を行っておりますが、月に数回、テレビ会議で状況報告など情報共有を定期的に行っております。」「私自身が『ものづくり』を理解することが、お客様へ最適な提案をする第一歩だと考えています。そのため時間があれば現場に行くよう心がけています。」と、ものづくりに対する社長の真摯な姿勢を感じました。
うえだらくのうきこうぎょうかぶしきがいしゃ植田酪農機工業株式会社
Interview No.17
■取材日:2020年2月10日
会社概要
明治43年に現在の千葉県鴨川市で創業。昭和14年に江戸川区に移転。かつては鉄工場として酪農用タンクの製造事業を行っていたが、昭和57年に徳島の液体充填機メーカー・四国化工機と業務提携し、包装機械メーカーへ事業転換。
四国化工機グループの一員として主に容器に飲料品を充填後の工程を担う包装機械を製造しており、お客様の「こういったものが欲しい」という要望にオーダーメイドで設計している。
現在では区内の産業用ロボットを取り扱う商社と連携し、食品工場の省人化やロボットの導入などの提案も手がけているほか、グループ企業一丸となって工場ライン上の機械のトータルコーディネートも行う。
今回取材に対応してくださった取締役副会長の植田洋一様(左)と管理課課長の川名博章様(右)。
菱形のマーク内の『U』は植田、『S』初代社長「植田修一」の名前から取っています。
創業地である鴨川の田原村周辺では、当時は結核が蔓延しており、亡くなる方も多数いました。結核には、栄養価が高い乳製品を摂取すると良いと考えられていました。そこで、乳製品を効率良く製造できる機器を製造し、多くの人々を健康にしたいという意味を込め、社名に『酪農機』を掲げました。
現在の業種は包装機械の製造ですが、その意志を今でも大切にし、この社名を現在でも受け継いでおります。
紙容器の充填技術に関しては日本有数の技術を保有していると自負しております。
『紙は魔物』と言われています。金属やプラスチックと比べ紙の容器は中身となる液体を充填または熱を加えた際に、容器が膨張・変形することが多々あります。「紙の容器なんて簡単に作れるのでは?」と思われるかもしれませんが、図面では測れない容器の変形具合などを考慮しないといけません。各部に線やくぼみを作ることや、変形しても安定性が保たれるような工夫など、一朝一夕には身につけられない技術が多く必要です。
現在では、コンビニやスーパーなどでたくさんの飲料品が陳列されていますが、底面をよく見ると弊社のグループ会社である四国化工機のマークが入っています。このマークは弊社の機械で製造された紙容器である印であり、四国化工機製の液体充填機として国内では7割以上のシェアを誇ります。特に牛乳パックなどでお馴染みの三角屋根の形状の容器は、非常に多くのお客様にご愛顧いただいております。
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ストローアプリケーター
飲料容器へストローを貼り付ける機械。容器のデザインやバーコードをよけて指定した位置へのストローの貼付が可能。 <完成イメージ>
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カートンケーサー
牛乳パックなどの三角屋根型の紙パック容器をプラスチックのケースに詰め込む機械。 <完成イメージ>
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パラレルロボットケーサー
ロボットが製品を掴んで、ケース等に詰め込んでいく機械。ロボットのアタッチメントにより様々な容器に対応可能な汎用性の高い機械。 <完成イメージ>
通常、容器の上に配置されたノズルから充填を行います。しかし、黒蜜入りなど粘度の高いものが入った飲料品などは充填時に容器の形状が樽のようになってしまい、ケースに上手く装填できないことやロボットアームで掴めないことがあります。そのため、容器の紙の厚さや材質の種類だけでなく、機械及び充填する液体の相性をひとつひとつ確認し、試行錯誤を重ね、それぞれに適した組み合わせを導き出します。
また、近年は容器のデザインや形状がユニークなものが多く、ストロー貼り付けの際、バーコードやロゴに重ならないようにしてほしいなどのご要望をいただきます。そのようなお客様のご要望に沿うよう、複数の機械を用いて、特定の場所にストローを貼り付けないなどの工夫をしております。
四国化工機グループには食品部門、包装資材部門、機械事業部門の3つがあり、弊社は機械事業部門の業務で携わっております。
どの部門も食品に関連しています。食品部門では豆乳の充填技術から発展しオリジナルブランドで豆腐や油揚げを作っております。包装資材部門では紙カップやカップラーメン、アイス、ヨーグルト用の容器本体を製造しております。そして、弊社ではそれらの部門で必要となる口栓やキャップなどの小さな部品から、部品そのものを容器に取り付ける専用の機械をグループ会社と連携しながら開発しております。
大型の機械を社内にて組立後、取引先へ納品するため、工場内は広く設けられています。取材時はいくつもの機械が並べられ、調整を行っておりました。取引先の方が直接来社し、実際に機械を稼働させ動作を確認する場面も。
事務所内では従業員の方々が機械の設計を行っており、静かな空間ながら集中して業務に取り組んでいる雰囲気がうかがえました。
「2年ほど前から近隣の工業高校と連携し、3~4週間程度のインターンシップ受け入れを行っております。学生は学業の中で早い時期から社会人生活を経験できるうえ、弊社は希望の人材とお会いすることができるため、現在でもこの活動を継続しております。」と、人材確保の取組みも積極的に行っている姿が取材の中でうかがえました。
弊社では組み立てから調整、出荷まで1台の機械の製造過程全体に携わることができるため、『自分が設計した機械』をより実感することができます。
また、その機械で製造された飲料品が実際にスーパーやコンビニエンスストアに陳列される光景を目にすることができるので、やりがいを感じることができます。
以前は乳業機器及び牛乳タンクなどの製造を行っておりました。ですが、これからは環境に関する観点からプラスチックから紙容器の時代だと考え、昭和57年に四国化工機との業務提携を行い、機械や製品を単品で販売していくよりも工場のライン全体の機械を製造していく方向へ事業の転換をいたしました。
事業転換により部品の調達から設計、営業品目にいたるまでほぼ全ての業務が変わりました。当初は大変苦労しましたが、現在では多くのお客様にご愛顧いただき、おかげさまで国内での四国化工機は紙容器充填機の分野で70%以上のシェアを獲得することができております。
自動化・省力化に関しては常に研究開発を進めております。グループ会社内で、食品の製造を担う部門が必要としている検品用機械などにとどまらず、グループ会社以外とも連携をとっております。特に区内の産業用ロボットを扱う商社とは密接に連携を取っており、「こういったものが欲しい」というお客様の要望へ向け、オーダーメイドで機械を設計し、ソリーションとしてご提案しております。
最終的には、国際中堅企業を目指しており、四国化工機を通じて中国にある自社工場「上海四国食品包装机機有限公司」を拠点に、国外へも事業を広げていきたいと計画しております。
植田酪農機工業株式会社の皆さま
「えどがわ産業ナビ」インタビューにご協力頂き、本当にありがとうございました。
インフォメーション
- 所在地
- 〒132-0025
東京都江戸川区松江2-14-20
- 最寄り駅
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■都営新宿線 船堀駅北口より
都営バス[新小21]新小岩駅前行
『京葉交差点』下車 徒歩3分 - 電話番号
- 03-3652-4161
- FAX
- 03-3656-1605
- ホームページ
- https://www.ueraku.co.jp/
鍛冶屋がルーツである植田酪農機工業様。創業から100年以上の歴史を有する中で守り神として祀っている『ふいご※』を見せていただきました。
「かつて実際に鍛冶場で使用していた木製のふいごを食堂にて祀っております。現在の業種に事業転換した現在でも弊社代々の守り神として手入れをしております。」と、非常に大切に保管されていました。
※ 金属を溶かす炉の中に風を送る道具。風を送ることで、炉の温度が上昇する。