平成2年に2代目として事業を継承。
「ゴムというのは『部品の部品』です。万一傷があったり不良品があったりした場合、大変なことになります。それを未然に防ぐため、様々な策を講じています。どこの会社もそうですが、見えない部分にたくさんの技術が隠されています。」
印象的な笑顔の中に、ものづくりに対する揺るぎない情熱と信念がうかがえました。
10代の頃からバイクが好きで、昔から活発的でした。
20代後半の頃に交通機動隊の隊員と意気投合したことがきっかけで、それ以来、社会貢献の思いで交通安全に尽力しています。法人会の先輩の勧めで交通安全協会にも入会、30年以上所属し、副会長を務めました。
全国交通安全協会会長から夫婦ふたりで頂いた表彰状。
かぶしきがいしゃきんまさごむ株式会社近政ゴム
Interview No.9

■取材日:2017年12月13日
会社概要

会社設立は昭和38年で、平成元年には栃木工場を開設。
自動車および自動車周辺機器メーカーなどからの受注を中心に、ガソリンタンクのパッキンや防振ゴム、カバーなどを主力製品とするほか、自動車関連以外では、電気製品の部品も製造している。最高水準のQ・C・D(品質・コスト・納期)対応を心掛け、クレームゼロを実現することを目標としている。
社名は、創業者である浅井政治郎(まさじろう)の名と、その出身地の近江にちなんで命名された。「三方良し(売り手良し、買い手良し、世間良し)」を是とする近江商人の気質を持ち続けたいという思いが込められている。

20年前から請け負っている自動車のガソリンタンクのパッキンをはじめとした自動車関連部品が主力製品です。
製品を製造する際に配合する原料の種類やその配分は、部品や自動車メーカーごとによってすべて異なります。1000以上ある配合表をもとにゴムの強度や伸縮性、膨張性などを適宜検証し、どんな発注にも柔軟に対応することができるようにしています。また、新たな配合を行う際には自社にない原料や薬品を使用する場合もありますが、日本全国にある原材料、薬品メーカーと連携しながらより高品質の製品づくりに取り組んでいます。そのことは、海外のゴム部品製造企業には見られない強みであり、日本の製造業の良いところです。
また、各自動車メーカーより提示された基準よりも厳しい基準で品質管理しているのも、取引先からの信頼に繋がっています。



昭和50年代に江戸川区内出身の障害のある方を雇用しておりましたが、会社として障害者雇用をするようになったのは、その後近くの中学校の特別支援学級の卒業生二人を雇用したのがきっかけです。
時計や数字が読めなかったり、片腕の筋力が弱く湯呑みがうまく運べなかったりと、人によって様々な障害を抱えていました。
そこで、会社だけでなく本人のご家族の方にも協力していただき、手厚くフォローしていきました。従業員が仕事帰りによく利用する銭湯などにも私自ら足を運び、あらかじめお店の人に何かあった時は手助けしていただくようお願いして回るなど、業務に関することだけでなく日常生活をする上で大切な基礎の部分もしっかりと面倒を見ました。
今では一緒に働いている従業員の方々の方がそのことを理解してくれています。時には叱咤激励をし、包んであげるところは包んであげる。本人、家族、会社が一体となって努力して障害を乗り越え、業務に支障のない程度までに仕事ができるようになりました。




各作業工程では、「先入れ・先出し」を徹底しています。例えば、ゴムと薬品を配合する配合場では、自然に古いものから使用できるよう2階にタンクを置いています。些細なことですが、無駄をなくすとともに、品質を保つために非常に重要なことです。
また熟練の職人は、長年の経験の蓄積からゴムの板を見ただけで出来上がった製品にミスや欠陥の有無が分かることもあるのですが、それを客観的に把握する必要があります。そのため、製品に振動や伸縮、圧力を加えて波長を読み取る機械を用いて検査しています。このことで科学的に品質を証明し、対外的に説明がつく記録として残しています。


「人間は間違える生き物」だと私は考えていますので、作業工程では様々な「網」を張っています。
まず、製品を作る際には必ず専用のノートに「何を、どれくらい使ったか」を記帳します。固形のものやある程度形状を維持している素材ならまだしも、粉状の素材に関しては数種類を一緒の容器に入れると分からなくなってしまうので、その点にも注意します。記録を残すことによって、お客様からお問い合わせがあった際に証明や説明ができます。その後、素材を混ぜて出来上がったゴムも重量を量り、記録します。
また、新しい配合レシピのオーダーが来た際には、まず試験機で試作し、仕上がりやゴムの練りやすさを確認します。練りやすさは仕事のやりやすさにつながり、さらにはそれがミスの防止につながりますからね。
ミスの防止については、従業員も一丸となって策を練っているため、誰かがミスをした時に、次の工程の人がそれを見つけ、注意し指摘し合うことが出来るようにしています。
品質というのは検査では作れません。検査では出来上がった製品の出来栄えを見ているだけですからね。品質というものは、製品を組み立てたり製造したりする工程の中で作っていかなければいけません。つまり、ものを作っているところで品質というものが作られていくということです。先ほども申し上げましたが「人間は間違える生き物」なので、例えばある製品に使う部品を別のラインに流してしまった。こんな間違いも無意識のうちにやってしまうということがあるんですよね。そんな時は区分けするための仕切りを付けるだけで、ミスはかなり減りました。お金をかけて改善することももちろんありますが、お金をかけなくても良くしていくことは出来ます。



社内には5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾(しつけ))のポスターが貼られており、勤務中にいつでも意識出来るようにしている。またスローガンも目につく所に掲げられている。



自動車という、命を乗せて走るものに使う部品を作るため、検品は2~3回に分けて行う。その際、一回毎に別の従業員が行っており、必ず2名以上の従業員が出来上がった製品を検査している。

生涯現役でいきたいと思っています。10年ほど前のリーマンショックの時は弊社も多大な影響を受け、一時期は合併を考えた時もありましたが、100歳を超えてもなお現役で活躍されているあるお医者さんの生き方に感銘を受け、合併はやめました。
先輩から後輩への技術のバトンもおおむね問題なく渡せていると思います。現在は、お客さんの要求する品質を科学的に分析し、薬品メーカーと協力して比率や配合を調節する分野に長けた人材を必要としています。
株式会社近政ゴムの皆さま
「えどがわ産業ナビ」インタビューにご協力頂き、本当にありがとうございました。