小物から大物までヘラシボリの技を幅広い分野へ
高橋絞工業 株式会社
住所:〒132-0035 東京都江戸川区平井2-9-16
電話:03-3681-5519
URL:http://tsk.dcsv.jp/front/bin/home.phtml
- 思いがけない分野のヘラシボリ製品
- 溶接加工とヘラシボリ、プレス加工とヘラシボリの渾然一体となる生産体制
- 楽器から医療部品まで広範囲に及ぶヘラシボリ製品
【事業内容】 思いがけない分野のヘラシボリ製品
同社は、1949年(昭和24年)創業以来、一貫してヘラシボリ加工中心に事業展開をしてきた。アルミ製食器、車のヘッドライトカバーからハダカ電球の傘、照明器具一般に至るまでシボリ加工を行っている。今では、楽器や衣料製品はもとより、こんなところにもヘラシボリ製品がと思う分野に進出している。
【会社の強み】 溶接加工とヘラシボリ、プレス加工とヘラシボリの渾然一体となる生産体制
金属加工事業所としてヘラシボリ加工及びそれに付随するプレス加工、板金加工、溶接加工等を行う。溶接加工とヘラシボリ、プレス加工とヘラシボリの渾然一体となる生産体制は安価にて供給可能であるため高く評価されている。多品種少量、サンプルの製作、小さな製品から大きな製品まで、これからも技術革新のため、あらゆるニーズを応えるため、努力を惜しまない。
【代表となる製品】 楽器から医療部品まで広範囲に及ぶヘラシボリ製品
ティンパニー(楽器)、シンバル(楽器)、フライパン、からくり大時計部品、レントゲン部品、その他医療機器部品等
【代表メッセージ】
代表取締役 高橋京一 氏
―― 御社の製品にティンパニーがございますが、その注文をいただくにあたってのいきさつを教えてください。
先代がある楽器会社から小物のシボリを受注したのがきっかけです。かれこれ45年ほどのお付き合いになります。そのお付き合いの中からティンパニーを作れないかと依頼を受け、製作を開始しました。最初は銅を絞った後で、高音域を出すためにハンマーの爪の後をつけて素材を硬くしていました。話がずれてしまいますが、この点で環境に配慮した経緯があります。いまこの作業を行っても騒音というレベルには達してはおりませんが、工場の周りに住宅が増えたため、このままですとご近所に迷惑をおかけすることになるかもしれないと思い、楽器会社の方にこの工程は依頼しました。一部の事業所では騒音問題で苦労していると聞いております。また小学生用のティンパニーも製造していますが、銅製でなく、アルミ製です。これは力のない小学生がもち運びできるように軽い材料でできています。
―― 学生を対象に工場見学を積極的に実施されていますが、学生からどのような感想を聞きますか?
小学生の工場見学時、生徒数が多いときは工場内に入りきらないことがまれにあります。溢れかえっている生徒さんを見て、近くを通る人は何事か?と思っているみたいです。キラキラした目の小学生に少しシボリを体験してもらうと、「超すごい!」「楽しい!」「こういう仕事をやりたい!」と感動してもらえると非常にうれしいですし、仕事への誇りを感じます。高校生のインターンシップの時は2~3名来て3日間実習するのですが、実習終了後、「僕は『ものづくり』という事を甘くみていました。」と言うのを聞くと感心してしまいます。おかげさまで新卒の学生を採用することができました。今では、若い人が少しずつ増えています。ある社員ですが、最初はあまり気乗りがしない様子でしたが、いざ仕事を始めると真剣に取り組んで、5年ほどしかたっていませんが、10年選手のように活躍しています。仕事に対する情熱と目の輝きが違ってくるのがわかります。
―― ヘラシボリといいますが、技術を習得するには一朝一夕というわけにいかないと思いますが、一人前になるにはどの程度の年月が必要になるのでしょうか?
当然、その人のセンスや習得度によって異なりますが、一般的に見て習得するには5年、10年の区切りが必要と考えています。最初は材料の柔らかいもの、例えばアルミのようなものからスタートします。そして銅へと移っていきます。5年たてば一般的なシボリを図面通りに製作することが可能ですが、特殊な材質、たとえばチタンなどの硬い物を加工する場合は10年ほどのキャリアが必要になります。
―― 技術継承の問題点である、熟練の人たちの高齢化と、中堅技術者の力量不足に課題があるかと思います。その点はいかがでしょうか?
弊社の事業は技術継承の難しい仕事であると思っています。しかし、気質は昔から変わらないところがあると思います。3名ほど70歳代の方がおりますが、この人たちは、動きとしては若い人たちに劣りますが、ところが、シボリの作業に関しては若い人が100個/日しかできないものを250個/日仕上げるわけです。何が違うかというと「コツ」の部分ではないかと思います。「コツ」を口で教えるだけでうまくいくものではありませんが、最近では、仕事を終わってから「ちょっとここをこうやってみな」というような先輩からのアドバイスを受けることで若手が育っているようです。先輩が声をかけているという事は、その後輩は筋がいいし、いつかは自分の片腕になってくれるという希望をもって接しているのでしょう。それが連帯感につながっているわけです。近年新卒の採用をしましたが、「ものづくり」に興味ある青年でしたので、いま職場では引っ張りだこです。
―― 現在、他分野に進出されていますが、その点をお聞かせください。
他分野といっても今まで発想のなかった製品をシボリで造ってしまおうということなのです。例えば風鈴です。風鈴といえばガラスの風鈴を思い浮かべますが、このガラス部分をシボリで造るということです。ガラスとは違った優しい風鈴の音色が聞くことができます。今までの殻を破ったシボリの製品に挑戦していこうと思っています。
―― 若い社員の方々へのメッセージをお願いします。
自分で造ったものが、ホテルの建物の中で使用されていたり、空港の天井に設置されていたりする状況を見て、達成感や自信につながると思います。若い社員といえば、新卒の女性を採用しました。今まで私は、女性には弊社の仕事は向かないと思い採用をしてきませんでした。しかし「ものづくり」の楽しさや興味のある女性がいることを知ることができましたし、自分の固定概念が崩れた瞬間でした。決して女性だからといってできない仕事ではないし、彼女の意見やアイデアは、弊社の今後を大きく左右する可能性を秘めていると思っています。仕事とは一般に短期間で結果が出るものではないと思います。それには辛抱と自己の意識を強く持つことが必要かと思います。